神奈川は12月の割に穏やかな気候です。こんにちわ。
iPS細胞を開発した山中伸弥教授の講演を聞く機会がありました。
正直な所、
なんか面白そうだ。本人見れるのか。
くらいのミーハーな気持ちで行ったのですが、大変心に残る講演でありました。
プレス席があいていたので前行っていいですかと係員さんに訊ねたら、どーぞどーぞ!とステージ近くの最前列でみることができラッキーでした。
まず、想像していたよりずっと笑いの多い1時間でした。
お医者を目指したきっかけであるお父様の写真をモニターに映し
『なかなかイケメンだと思うのですが…私もこれだけ髪があればなぁと』という掴みの明るさで最後まで進行します。
教授のお父様は町工場経営をしており、その仕事中に負った傷の治療中、輸血からC型肝炎に感染し、当時C型はまだ治療法が確立されておらず、肝炎→肝硬変へと進行。
お父さんはお医者になったばかりの息子に点滴を打ってもらい嬉しそうだったが、
若き教授が「自分が出来ることはこれだけか」と忸怩たる思いを抱くなか
お父様は肝硬変の悪化でお亡くなりになります。
「父はなすすべもなく死んでゆきました」という言葉の選択に、教授の無念が表れていると私は感じました。
その後現場に立つ臨床医から研究へとステージを替える教授。
渡米中にアメリカでの師から、シンヤ、大事なのは『Vision HardWork』だよ。君のビジョンはなんだ?と問われ
自分は治療法のない病気を治せる医者になりたいのだ、と進路を明確に。
ここから紆余曲折を経てiPS細胞の開発へ。
医学界で、何にでも分化できる細胞=基幹細胞を受精卵から作ることには成功していた。いわゆるES細胞。
けど、受精卵をバラバラにして作り出す手法は倫理的にどうなのかということ、またその為に広まらない実情から
ならば普通の細胞から基幹細胞を作ろう、という目標を立てた。
すでに同じ仮説で研究を進めている人が何人もいたけど、皆、普通の細胞を基幹細胞に変える『1つの』スイッチを探していた。
自分は
『1つならとっくに誰か探し当てている、複数なのでは?』
と仮説を立てて、結果『細胞のDNAを4つ同時に刺激すること』で成功した。これがiPS細胞。
算数で組み合わせの計算てやるじゃないですか。
3通り×8通り×5通り=120通り、みたいな。
教授は
4つで良かった~、もしこのスイッチが10こだったら、恐らくまだiPS細胞作れてないです(^ω^)
とサラっと言っていましたが
細胞の中にある遺伝子の数は2万2千個程度とのこと、もうこの時点で物凄い回数の実験をこなしているはずです。(白目)
研究職とはそういうお仕事なのですね。
-----------
・日本人の3人に1人が癌で死ぬ現在。
体内でがん細胞が発生すると免疫細胞がやっつけにいくけど、癌細胞というのは異常に元気なやつで、ひたすら増えるのが役目。
免疫細胞は頑張って攻撃するけど役目を終え死んで足りなくなり、がんの増殖がまさってしまう。
この癌を攻撃する免疫細胞からiPS細胞を作るといくらでも増やすことができ、また再び免疫細胞に戻す方法も見つかっている。
再度免疫細胞に分化した際、がんを攻撃するという記憶をきちんと持っていることもわかった。
これを5年程度で癌治療に応用していこうと動いている。
-----------
・元は血液だった細胞を「DNAスイッチ4つ押し」でiPS細胞に変え網膜へ培養、視力回復への展望が見え始めた、
-----------
・アルツハイマーの研究所で色々な被験者さんのiPS細胞を作って脳細胞に分化させたところ、細胞自体に異常がある人とそうでない人に別れた。
同じアルツハイマーと言う病名でもその原因は違い、効く薬も違うことがわかった。
脳の細胞を取るなんて出来ないけどiPS細胞ならそれを再現でき、その人に合う薬を事前に特定できる。
-----------
等々、発見の経緯やどう応用するの?の例がさすが、今まで聞いたなかで一番わかりやすかったです。
■iPS細胞の名前の由来
induced pluripotent stem cell
人工 多能性 基幹細胞
日本人は新しい発見を色々して命名するけど、その後それを使う海外の人のほうがカッコいい名前をつけてそっちが流通定着しちゃう。
自分(山中教授)も1回経験がある。悔しい!
だから考えに考えて格好いい名前をつけて、更にその時iPodが流行ってたからiを小文字にしちゃいました。
のちのちAppleの人に会う機会があって『こういうのアリでしょうか』と聞いたら『いいんじゃない?』と返されたので、公認かなと思ってます。(ゝ。∂)テヘペロ
私も、なんでiが小文字なのかなーと思ってました。その分野的規則でもあるのかしらなんて考えてましたが、まさかのカワイイ理由。
他にも笑いがチョコチョコと挟み込まれます。
この講演のタイトルが先にも書いた『ビジョン・ハードワーク・イノベーション Vision HardWork(イノベーションはITイベントの趣旨)』 教授がアメリカの師に言われた「目的をハッキリ持ち、頑張ること」が元。
今日はこの言葉を是非…(画面に頭文字VWの文字)
今はVWっていうとちょっと微妙なことになっちゃうんですけど…
(注:現在フォルクスワーゲン社が排ガス不正問題で新聞を賑わしております)
私はトヨタです(´・w・)。
とか
私はマラソンが好きで今年は京都、大阪、先日は香港でも走ってきました。
マラソンをする人間にとってサブフォーと呼ばれる42.195kmを4時間以内で走ることがひとつの目標でして、私もそこを目指しております。で、このあいだの大阪での私のタイムがどうだったかというと…
ゴール瞬間の教授の写真表示、映り込む電光掲示板に『4時間00分01秒』
悔しかった、今年一番悔しかったです!
マラソンで寄付を募っておりましてありがたくも1回1千万くらい集まります。
でも目標額には年50回走る必要があり、週に一回…それはさすがにしんどいと。許してくれと。
で、寄付の窓口作りました☆ スタッフの方が取ってくれた問合わせの電話番号がコレです。
☎0120-80-87 48
(0120-ハシレ-ヤマナカ シンヤ)
結局私走らないかんのか!
などなど、最初から最後まで笑いが絶えず、ああ関西の人なのだなぁ、という空気の中
門外漢には難しい話を噛み砕き、わかりやすくしつつ、飽きさせず聞かせてくれました。
また、驚いたのがマラソンで寄付を募っているのは、国からの資金は規約的にスタッフの正規雇用に使えないという理由が大きいと。
iPS細胞研究所が京都大学内に設立されて約400人が所属しているが、この理由で9割が非正規雇用だそうで。なんてこった…。
そして講演は終盤へ。
ところで、今C型肝炎には特効薬が開発されておりまして…正に今年日本でも認可され、つい先月販売が開始されました。
こんな小さな錠剤を3ヶ月飲み続けることで99.9%治せるようになっているんです。薬の原価は1錠1000円程度かなと。私の父も今なら…今なら死ななくて済んだんですね。
ところが、日本でこれを買おうとしたらいくらか。
1錠が8万円。この小さな一粒が8万円。
完治までに膨大な金額がかかります。
現在ある欧米のベンチャー企業がこの薬の特許を取得し独占しているからなんです。
私たちがiPS細胞研究所を設立してまず着手したのが、世界中いろんな国でiPS細胞の特許を取ることでした。
これはどこか別の企業が特許を取ってiPS細胞の使用権を独占してしまうのを防ぎ、研究開発、治療したい人に行き渡らせるためなんです。
この辺で自分でも思いがけず涙が出てきてしまい焦りました。
今、治せないといわれる病気をいつか治すために研究をしていて、iPS細胞はそこに近づいている。
これからもビジョン、ハードワークで研究を進めていく所存です。
そしていつか父に会う日がきたらー…、少し誉めてもらえるかな…と。
■閉幕■
駄目でした、決壊です。黒部ダムの放水です。
スーツのビジネスマンに囲まれて「な、泣いてなんかいないんだからねっ!!」と嗚咽だけは耐えましたが予想外のアウトです。
本当に良い講演でした、聞きに行って良かったです。

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iPS細胞を開発した山中伸弥教授の講演を聞く機会がありました。
正直な所、
なんか面白そうだ。本人見れるのか。
くらいのミーハーな気持ちで行ったのですが、大変心に残る講演でありました。
プレス席があいていたので前行っていいですかと係員さんに訊ねたら、どーぞどーぞ!とステージ近くの最前列でみることができラッキーでした。
まず、想像していたよりずっと笑いの多い1時間でした。
お医者を目指したきっかけであるお父様の写真をモニターに映し
『なかなかイケメンだと思うのですが…私もこれだけ髪があればなぁと』という掴みの明るさで最後まで進行します。
教授のお父様は町工場経営をしており、その仕事中に負った傷の治療中、輸血からC型肝炎に感染し、当時C型はまだ治療法が確立されておらず、肝炎→肝硬変へと進行。
お父さんはお医者になったばかりの息子に点滴を打ってもらい嬉しそうだったが、
若き教授が「自分が出来ることはこれだけか」と忸怩たる思いを抱くなか
お父様は肝硬変の悪化でお亡くなりになります。
「父はなすすべもなく死んでゆきました」という言葉の選択に、教授の無念が表れていると私は感じました。
その後現場に立つ臨床医から研究へとステージを替える教授。
渡米中にアメリカでの師から、シンヤ、大事なのは『Vision HardWork』だよ。君のビジョンはなんだ?と問われ
自分は治療法のない病気を治せる医者になりたいのだ、と進路を明確に。
ここから紆余曲折を経てiPS細胞の開発へ。
医学界で、何にでも分化できる細胞=基幹細胞を受精卵から作ることには成功していた。いわゆるES細胞。
けど、受精卵をバラバラにして作り出す手法は倫理的にどうなのかということ、またその為に広まらない実情から
ならば普通の細胞から基幹細胞を作ろう、という目標を立てた。
すでに同じ仮説で研究を進めている人が何人もいたけど、皆、普通の細胞を基幹細胞に変える『1つの』スイッチを探していた。
自分は
『1つならとっくに誰か探し当てている、複数なのでは?』
と仮説を立てて、結果『細胞のDNAを4つ同時に刺激すること』で成功した。これがiPS細胞。
算数で組み合わせの計算てやるじゃないですか。
3通り×8通り×5通り=120通り、みたいな。
教授は
4つで良かった~、もしこのスイッチが10こだったら、恐らくまだiPS細胞作れてないです(^ω^)
とサラっと言っていましたが
細胞の中にある遺伝子の数は2万2千個程度とのこと、もうこの時点で物凄い回数の実験をこなしているはずです。(白目)
研究職とはそういうお仕事なのですね。
-----------
・日本人の3人に1人が癌で死ぬ現在。
体内でがん細胞が発生すると免疫細胞がやっつけにいくけど、癌細胞というのは異常に元気なやつで、ひたすら増えるのが役目。
免疫細胞は頑張って攻撃するけど役目を終え死んで足りなくなり、がんの増殖がまさってしまう。
この癌を攻撃する免疫細胞からiPS細胞を作るといくらでも増やすことができ、また再び免疫細胞に戻す方法も見つかっている。
再度免疫細胞に分化した際、がんを攻撃するという記憶をきちんと持っていることもわかった。
これを5年程度で癌治療に応用していこうと動いている。
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・元は血液だった細胞を「DNAスイッチ4つ押し」でiPS細胞に変え網膜へ培養、視力回復への展望が見え始めた、
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・アルツハイマーの研究所で色々な被験者さんのiPS細胞を作って脳細胞に分化させたところ、細胞自体に異常がある人とそうでない人に別れた。
同じアルツハイマーと言う病名でもその原因は違い、効く薬も違うことがわかった。
脳の細胞を取るなんて出来ないけどiPS細胞ならそれを再現でき、その人に合う薬を事前に特定できる。
-----------
等々、発見の経緯やどう応用するの?の例がさすが、今まで聞いたなかで一番わかりやすかったです。
■iPS細胞の名前の由来
induced pluripotent stem cell
人工 多能性 基幹細胞
日本人は新しい発見を色々して命名するけど、その後それを使う海外の人のほうがカッコいい名前をつけてそっちが流通定着しちゃう。
自分(山中教授)も1回経験がある。悔しい!
だから考えに考えて格好いい名前をつけて、更にその時iPodが流行ってたからiを小文字にしちゃいました。
のちのちAppleの人に会う機会があって『こういうのアリでしょうか』と聞いたら『いいんじゃない?』と返されたので、公認かなと思ってます。(ゝ。∂)テヘペロ
私も、なんでiが小文字なのかなーと思ってました。その分野的規則でもあるのかしらなんて考えてましたが、まさかのカワイイ理由。
他にも笑いがチョコチョコと挟み込まれます。
この講演のタイトルが先にも書いた『ビジョン・ハードワーク・イノベーション Vision HardWork(イノベーションはITイベントの趣旨)』 教授がアメリカの師に言われた「目的をハッキリ持ち、頑張ること」が元。
今日はこの言葉を是非…(画面に頭文字VWの文字)
今はVWっていうとちょっと微妙なことになっちゃうんですけど…
(注:現在フォルクスワーゲン社が排ガス不正問題で新聞を賑わしております)
私はトヨタです(´・w・)。
とか
私はマラソンが好きで今年は京都、大阪、先日は香港でも走ってきました。
マラソンをする人間にとってサブフォーと呼ばれる42.195kmを4時間以内で走ることがひとつの目標でして、私もそこを目指しております。で、このあいだの大阪での私のタイムがどうだったかというと…
ゴール瞬間の教授の写真表示、映り込む電光掲示板に『4時間00分01秒』
悔しかった、今年一番悔しかったです!
マラソンで寄付を募っておりましてありがたくも1回1千万くらい集まります。
でも目標額には年50回走る必要があり、週に一回…それはさすがにしんどいと。許してくれと。
で、寄付の窓口作りました☆ スタッフの方が取ってくれた問合わせの電話番号がコレです。
☎0120-80-87 48
(0120-ハシレ-ヤマナカ シンヤ)
結局私走らないかんのか!
などなど、最初から最後まで笑いが絶えず、ああ関西の人なのだなぁ、という空気の中
門外漢には難しい話を噛み砕き、わかりやすくしつつ、飽きさせず聞かせてくれました。
また、驚いたのがマラソンで寄付を募っているのは、国からの資金は規約的にスタッフの正規雇用に使えないという理由が大きいと。
iPS細胞研究所が京都大学内に設立されて約400人が所属しているが、この理由で9割が非正規雇用だそうで。なんてこった…。
そして講演は終盤へ。
ところで、今C型肝炎には特効薬が開発されておりまして…正に今年日本でも認可され、つい先月販売が開始されました。
こんな小さな錠剤を3ヶ月飲み続けることで99.9%治せるようになっているんです。薬の原価は1錠1000円程度かなと。私の父も今なら…今なら死ななくて済んだんですね。
ところが、日本でこれを買おうとしたらいくらか。
1錠が8万円。この小さな一粒が8万円。
完治までに膨大な金額がかかります。
現在ある欧米のベンチャー企業がこの薬の特許を取得し独占しているからなんです。
私たちがiPS細胞研究所を設立してまず着手したのが、世界中いろんな国でiPS細胞の特許を取ることでした。
これはどこか別の企業が特許を取ってiPS細胞の使用権を独占してしまうのを防ぎ、研究開発、治療したい人に行き渡らせるためなんです。
この辺で自分でも思いがけず涙が出てきてしまい焦りました。
今、治せないといわれる病気をいつか治すために研究をしていて、iPS細胞はそこに近づいている。
これからもビジョン、ハードワークで研究を進めていく所存です。
そしていつか父に会う日がきたらー…、少し誉めてもらえるかな…と。
■閉幕■
駄目でした、決壊です。黒部ダムの放水です。
スーツのビジネスマンに囲まれて「な、泣いてなんかいないんだからねっ!!」と嗚咽だけは耐えましたが予想外のアウトです。
本当に良い講演でした、聞きに行って良かったです。


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